業界トピックス
機能性表示の落とし穴
2019.4.1
健康産業新聞の調査で、2018年に販売された健康食品・保険機能食品の新商品のうち、3割が機能性表示食品だったことが明らかになりました。過半数を占めたのは健康食品で59%、次いで機能性表示食品の30%、栄養機能食品が6%、特定保健用食品は5%という結果が出ています。公的な統計ではないものの、全体の市場規模は8,000億円から1兆円、機能性表示食品だけでも2,000億円と推定されており、今後も拡大を続けるものと思われます。
勢力を拡げる機能性表示食品ですが、その届出表示が問題になるケースがあります。消費者庁は昨年末、「歩行能力の改善」と表示した12社15製品に対し、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に抵触する可能性があるとして、販売者に対応を求めました。事前チェックを受けた届出表示が薬機法違反と指摘される事態に事業者の間では困惑が生じています。そもそも薬機法規制から除外されているはずの機能性表示食品で、なぜ今回のような事態が起きたのでしょうか。
実は、薬機法を所管する厚労省の強い意向が裏で糸を引いているようです。消費者庁、厚労省ともに明確な回答には至っていませんが、「歩行能力の改善」効果をうたった医薬品の有無が気なります。厚労省は「医薬品に該当する可能性があるので注意が必要」と回答しており、やはり機能性食品の表示と医薬品の効果が重複したことに指摘の発端があるようです。
一方で、機能性表示食品には「改善」を表示し、受理・販売されているものは多く存在しています。今回のような事態となってしまう理由、その論点は医薬品に同様の効果をうたった物があるかないか。今後、事業者は「身体的な疲労感を軽減することで(歩行機能の改善)」「ひざ関節の柔軟性・可動性をサポートすることで(歩行機能の改善)」など前後の文脈に工夫を加えることで、厚労省の極めて微妙なさじ加減を窺う必要があるでしょう。
今回指摘された機能性表示食品はすべてSR(システマティックレビュー)を利用し届出されたものでした。SRは低コストにて機能性表示の届出が可能で、多くの中小企業が利用しています。スピードを求める企業にとって短期間で実施できるSRですが、スピードを求めることで、今回のような予想だにしない落とし穴にはまる可能性もあります。回避するには、臨床試験受託業社等の専門家と機能性表示についてもしっかり議論を重ね、最終製品による臨床試験を実施することも、急がば回れの勝負事として視野に入れると良いでしょう。